身近に採取できる材料を使い、地元の人々の手で葺き替えられてきた茅葺き屋根は、
その地方の環境により材料、葺き方、形状も大きく異なります。
筑波山麓に観られるような豊かな穀倉地帯では、豪農が多く、隣と競い合ううちに、
職人の手間のかかった、装飾性に富む独自の化粧仕事が発達してきたといわれています。
段葺き、通しもの と呼ばれる軒の化粧
藁、古茅、ヤマガヤ、シマガヤ、ヨシなど、茅の種類を替え、間に竹の管を並べたり、と
一枚ずつ軒の表情を変えてみせる。
軒を大きく張り出したこの技術は雪が少ないこの地方ならではのもの。
グシ と呼ばれる棟の納まりの部分は割竹を編んだ簾を巻き、真竹を拉いで拵えたひしぎ竹で補強される。最後に棕櫚の皮でちょんまげを結い、ぐしの完成を祝う。
キリトビ と呼ばれる棟の小口の化粧
屋根の顔となる棟の小口には芯となる部分にハサミで文字を彫り、 墨を入れる。
周りには小口を白く塗った竹の管や茅、杉皮をまわす。
文字は寿、水、龍など縁起や火伏せのまじないの意味が込められている。
写真は水の み を崩した文字
これらの化粧は屋根の耐久性には直接関わりのない部分だが、施主のこだわりに応え、よい屋根を作りたいという職人の気持ちと遊び心によって発展してきたと思われる。